インタビュー シューレ大学で探究するということ

シューレ大学はほかに同じような場所がないので説明がなかなかむずかしいしいところがあります。このページで学生・スタッフへのインタビューを定期連載していきます。場は、人がつくって初めて場になります。インタビューに答える彼らの姿を通して、シューレ大学を知っていただけたら幸いです。
new 2008-07-10 update

映像を通して人とつながり私をさらけ出す 石本恵美の巻

シューレ大学の学生やスタッフにさまざまな話を聞く、シューレ大学インタビュー。四人目は石本恵美さんです。石本さんの探究の中心は映像制作です。これまで、フィクション、ミュージッククリップやCM,シューレ大学の紹介ビデオ、ドキュメンタリーなど、さまざまな映像作品を制作してきました。

第3回 シューレ大学紹介ビデオが転機になった

08.07.10up
石本さんが現在のように、
映像中心の生活となる転換点となった年について聞きました。

ハジャセンター*1でなにか得られるかもしれない

――『温色』*2の後は、どのような映像をつくるんですか?

『温色』の後、映像を作っていないブランクが一年数ヶ月くらいあって、その間も映像を作ろうとしたけれど、ちゃんと形にならないということを繰り返していて、フラストレーションが溜まっていました。

そのころにハジャセンターという韓国のオルタナティヴな学びの場で3週間の短期留学をする話があって、苦しい状況を打破したい、プロフェッショナルなことをやっている彼らから刺激を受けたい、ということもあって、ハジャセンターに留学するんですね。

――ハジャセンターでの留学中はどんなことをしてたんですか?

最初は音楽のライブや映像の大会があって、それに参加したりしてました。それで、最後の数日に映像ファクトリーの人と「Love Solitude(愛・孤独)」というテーマで映像をつくるという企画ができた。

私はそのテーマで『Water / Drops』*3という作品をなんとか完成させて、最後の日に上映会をやって、見に来てくれたハジャのメンバーから感想をもらったりしたのもよかった。

ハジャでは映像をつくるという企画を立ち上げて、完成させて、上映会を開いて感想をもらうという一通りをやり切れたのがよかったと思います。

映像作品『Water / Drops』のシーン
映像作品『Water / Drops』のシーン

一人よがりではなくて、紹介ビデオの役割を果たしている

――韓国から帰ってきてからはどんな映像を作ったんですか?

シューレ大学の紹介ビデオ*4をつくるんですね。以前のものはもう古くなっていて、そろそろ新しいものを作る必要があって、それに私自身も紹介ビデオを作ってみたかったんです。

最初はほぼ私が一人で構成を考えて、撮影して作っていたんですが、なかなかすっきりまとまらなかった。それで学生の一人が一緒に作ろうと言ってくれて、二人で協力してやったら、とても作りやすかった。

――紹介ビデオを作ってみてどうでしたか?

最終的には自分として納得のいく映像がつくれたんですね。一般的な紹介ビデオは地味で説明的で真面目で面白くないと思っていて、映像として見ても面白いものをつくりたかったんです。実際の大学の活動風景だけじゃなくて、演出を加えた映像も使って、それをノリのいい音楽にのせて作りました。

私がつくった紹介ビデオは毎月行なわれる東京シューレの説明会*5やシューレ大を説明するときに使ってもらえて、しかも、いい反応が貰えた。これはかなり作りたいように作ったんですが、それが私だけの一人よがりではなくて、紹介ビデオの役割もちゃんと果たしたんですね。それが自信につながりました。

映像三昧の石本恵美さん
映像三昧の石本恵美さん

映像三昧人生元年

――その後はどんな作品を作ったんですか。

紹介ビデオをつくった後に、二三ヶ月の内に三本の映像を作りました。マルセイユ石鹸のコマーシャル*6、学生が作った音楽CDのプロモーションビデオ*7、紀要第二号*8の著者へのインタビュー映像の三本です。

もともといろんなタイプの映像をつくりたいという気持ちはあったんですが、その気持ちが紹介ビデオを作ったことをきっかけに拍車がかかって、このころは毎回違うことをやろうということを意識していました。それと、こういった映像を作ったのは、自分にとって身近なシューレ大の人々を魅力的に撮りたい思いもあったからです。

――石本さんにとってこの年はどういう年だったと言えますか?

転換点の年。それから私の生活は映像三昧になりました。私のイメージでは、映像を作ったり表現をしたりする人の多くは、初期の作品では、自己の内面に向かった作品をつくって、気が済んだらほかに題材を求める。

私は『温色』『Water / Drops』をつくって、とりあえず自白の時期は終わった。それで自分の中だけではなくて、外側にも題材を求める時期に入ったのではないかと思いました。

この年におこなった公開イベント*9のゲストが辛淑玉さんだったんですけど、映像を見て、「すごいね、これ」って言ってくれて、辛さんから映像制作の仕事を貰いました。他にも身近な人から映像制作の依頼を受けるようになって、映像制作を通して人と関わるようになりました。

<つづきます>

ハジャセンター*1 韓国の若者を対象としたオルタナティブ教育機関。ハジャセンターには、映像や音楽、デザインなどの6つのファクトリーがあり、そのファクトリーには「パンドリ」と呼ばれる専門的なスタッフがいる。若者たちは専門的な技術や知識を手に入れることができる。ハジャセンター ウェブサイト(韓国語)
『温色』*2 1人部屋で自分をもてあましている女性は、夢や妄想と現実のはざまで、ホットケーキの悪夢を見る。そののち外へ出て、壁に物を投げつける。
『Water / Drops』*3 石本はこの作品の中で、地面に刺さった杭をお互いを求めつつも触れ合うことが出来ない人間の寂しさとして描いた。
シューレ大学の紹介ビデオ*4 最新版のシューレ大学紹介ビデオはこちらで見ることができます。
東京シューレの説明会*5 シューレ大学の運営母体であるNPO法人東京シューレが、東京シューレへの入会や不登校・フリースクール情報を求めている保護者を対象に、毎月定例で行なう説明会。
マルセイユ石鹸のコマーシャル*6 シューレ大学の学生有志がつくる「アルバイトの会」の活動のひとつにマルセイユ石鹸を製造、販売する「あわあわ」があり、そのコマーシャルビデオのことである。
音楽CDのプロモーションビデオ*7 音楽プロジェクトが制作した音楽CD「タケル」のプロモーションビデオ。制作風景や音楽のイメージ映像がちりばめられている。メンバーが非常にかっこよく撮られている。
紀要第二号*8 シューレ大学の紀要には、学生やスタッフの研究の文章、アドバイザーの講演録が掲載されている。この第二号では、ニューヨークの青少年のための団体についてや、不登校非当事者である学生が自らを振り返った文章、また男性学を用いて自分の性を深める文章などが載った。まだ在庫があります。こちらをどうぞ。
公開イベント*9 シューレ大学を世の人々に知ってもらったり、関心のある人々とつながる機会として、毎年外部のホールを借りて行っているイベント。個々の探求やプロジェクトの作品を発表する。この年の公開イベントは、演劇や研究発表、シンポジウムなども行ったが、新作映像がたくさん上映されたことが大きな特徴である。
これまでのインタビュー
私であるために絵を描く 山本菜々子の巻
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研究することで人や自分を自由にする 長井岳の巻
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存在と存在をコミュニケーション 高橋貞恩の巻
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