インタビュー シューレ大学で探究するということ

研究することで人や自分を自由にする 長井岳の巻

シューレ大学の学生やスタッフにさまざまな話を聞く、シューレ大学インタビュー。二人目は、長井岳くんです。長井君は、ソーラーカー製作や演劇、研究などをしており、特に研究に力を入れています。

第1回 あっ、僕がつくりたい学校と
一緒じゃないか

07.04.27up
初回は、長井くんがシューレ大学に入るまでの経緯を聞きました。

慢性的な自殺。生きている実感を必要としていた

――シューレ大学に入る前はどんなことをしていたんですか?

一般の大学に在籍していたんですよ。かなり期待をして大学に入ったんですね。だけど、授業中に質問しまくったら、「あなたが質問することはこの授業を乱す」と言われ失望したり、自分と同じような学歴コンプレックスを持っている同級生が嫌だったり、大学に行くと辛い気持になったりして、あんまり行かなくなったんですね。

それでバイト三昧になった。バイトが楽しかったというより、人と触れあえるとか、何かをしている安心感を求めていた感じがありました。

当時の自分を見ると、慢性的に自殺をしつづけているみたいな感じがして。居酒屋では、夕方5時から朝の5時まで、月300時間近くバイトする。この大変なバイトを乗り越えられれば強くなれるんじゃないか、と思っていました。

バイクに乗ってスピードを出したり、車をあおったり、トラックとトラックの隙間をすり抜けるということをしていました。すごく怖いんですね。でも「ここでアクセルを緩めなければ強くなれる」と思ってましたね。

酒の呑み方も破滅的なんですね。一人の時も、人といる時も、呑めるだけ呑む。バイトから帰ってきて、コンビニでビールとかを十本とか買いこんで、がーって呑んでそのままコテン、みたいな感じでした。

ただ、その時は「僕は自殺をしよう」と思っていたわけではなくて、生きようとしていたんだと思います。「強く」なろうとし続けていたことも、「強さ」を求めていたのではなくて、生きてる実感みたいなものが必要だったんじゃないか。

それがひたすら酒を呑むことであり、ひたすらバイトをすることであり、バイクに乗って危険なことをすることだったんじゃないかと思いますね。

長井インタビュー風景

不登校にまっすぐ目を向けよう

大学3年が終わった時点で、将来について考えたとき、働くこともきついし、人間関係もつらくて、自分はこの先どうしようか、一生この生活を送るのかと思い、絶望的な気持になっていました。

大学も卒業に128単位必要なところ4単位しか取ってなくて。それで一発逆転というか自分の状況を変えたいと、インドへ一人旅をするんですね。

でも何も解決しなくて、「まだ自分は強くなってない」と思うんですよね。じゃあ、どこからおかしくなったんだろう。あっ、不登校だ。中学校の不登校の時から僕の人生はおかしくなったんだ。じゃあ不登校から考えるしかない。

同時に、自分は強くなろう強くなろうとしつづけてきたけれども、それは不登校をした弱い自分から逃げ続けることだったんじゃないか。それで、不登校をした自分、不登校そのものにまっすぐ目を向けようと思い、ガッと方向転換をしたんですね。

大学の風景

僕がつくりたい学校と一緒じゃないか

それから、母親のつながりで不登校の親の会*1に顔を出したり、不登校がテーマの映画の上映活動をしたり。あと教育とか不登校に関するいろんな集会に参加しながら、自分の中にある不登校について考え始めました。

そこで、東京シューレという場所を知って、そこにはどうやら大学があるらしいということを知るんです。チラシでは公開イベント*2が近々あるということで、早速行ってみることにしました。

イベントでは、ソーラーカー制作*3や不登校研究の発表をするとか、シンポジウムで学生が話す姿を見て、とても安心をして。人数は少ないのに、とても多様なんですね。

誰かにやらされているとしたら、決してそんなふうにはならない。それでパンフレット*4をぱらぱら見ていくと、「自由であろう」「学びたいことを学ぶ」と書いてあり、「あっ、これは僕がつくりたいと思ってた学校と一緒じゃないか」って思った。

当時僕は「学校をつくりたい」という夢を持っていて。本当に自由で、1対1の対話を主にした、お互いに学びあえるような、先生のいない、そんな場所をつくりたいと思っていたんですね。

それでシューレ大学の学生たちがしゃべっている場所に自分がいることができるんじゃないかと感じたんです。それは初めてに近い体験でした。

例えばバイトをしたらそのバイトの人達は自分と違っていて、自分はそこに合わせなくちゃいけない、学校では先生や同級生に合わせなくちゃいけないと思っていた。

それがシューレ大学の学生を見て、合わせることをしなくても自分がそこに居れる気がした。やっと求めていた場所に出会えたという感じだったんじゃないかと思います。

ものすごい感動だったんですが、家に帰って、冷静になって酒とか呑んで、学歴がつかないとか自分の年齢とか学費のことを考えたら、やっぱりシューレ大に入らないんじゃないか。でも入りたい。それでその場で、勢いで入学申込書を書いて渡しました。

<次回につづきます>

不登校の親の会*1 不登校の子どもを持つ親などが集まって、それぞれの体験や情報を共有したりしている。全国各地にある。
公開イベント*2 2001年6月30日に行なわれた第1回公開イベント。「知る・学ぶ・生きる」をテーマに、鎌田慧さんの講演、ソーラーカープロジェクトのアピール、不登校歴史研究発表、ピアノ演奏、学生・スタッフシンポジウムなどを行なった。
ソーラーカー制作*3 ソーラーカープロジェクトのアピールを公開イベントで行なった。ソーラーエネルギーで走る車で、鈴鹿サーキットで行なわれるレースを目標に2000年秋に活動を開始。
シューレ大学パンフレット*4 長井くんが読んだのは、開設当初から2007年9月まで使用していた過去のバージョン。パンフレットは、この秋に全面リニューアルし、大変好評である。